学生時代の貴重な音源・CHICAGOのJUMP FOR JOY/父はかく語りき
~伊勢太郎の父はかく語りきvol.6~
こんにちは、make me smileです。
大昔、今から47~8年近く前の事、古すぎて正確な事は覚えていません。
中3か高1の頃だと思います。
時間は午後7時半か8時頃に、NHKで「デューク・エリントンのバースデイ・コンサート」が放映されました。
「デューク・エリントン」とはビッグバンド・ジャズの大御所で、代表曲に「A列車で行こう(Take The A-Train)」と言うジャズのスタンダード・ナンバーがあります。
今はもうこの世にいませんが、この時はまだ御存命だったのですね。
ロック界からはまだ若い「シカゴ」がゲストとして出演し、1曲だけ演奏しました。
演奏した曲はシカゴのオリジナル曲ではなく「JUMP FOR JOY」と言う曲。
デューク・エリントンが作曲したミュージカル曲だそうです。
原曲はもちろんのこと、デューク・エリントン自体知らなかった私。
初めて聞く曲です。TVに向かって正座です。背筋を伸ばした正しい姿勢です。
ここで少し時間を割き、当時私達のような中高生の若年ファンの置かれた、昔の音楽事情についてお話しておきたいと思います。
私達のような若い音楽リスナーにとって、アーティストの動く姿を見ることは本当に貴重で大変なことでした。
外国ミュージシャンの姿と言えば、基本的にはレコードのジャケット以外にはありません(写っていればいいですが…)。
音楽雑誌の、その号に写真が掲載されていればファンとしてはラッキーだと思わなければなりません。
数週間に一度、深夜に30分程度の洋楽番組がありました。
開始時間や突然の中止などもあり、まだ学生だった私はほとんど見た記憶がありません。
一般家庭にビデオ・レコーダーが普及すつのはまだ後の話です。
とにかく
見逃したり
聞き逃したらアウト
「たかが音楽、されど音楽」
現在のように朝から晩まで、延々とミュージック・ビデオを流している音楽専門チャンネルがある訳でもなく、DVDがある訳でもなく、完全にイメージの世界・想像の世界…。
もし、TV放映の情報を事前に入手でも出来ていれば、もう大変。
カレンダーに印をつけて「初デートを待つウブな少年」のような状態。
TV放映はもはやイベント
一大イベント
ドーム公演!!
(たかが外国ミュージシャンが出演しているTVですよ)
理解できますか?TVに向かって正座する気持ちが…。
私の記憶にある映像は、ピンク・フロイド、エマーソン・レイク&パーマー、そしてシカゴです。全てNHKのような気がします。
私が高校生の時のこと。初めて(私にとっては)シカゴの映像が30分枠?でTVで放映される日、内容は野外ライブ、スタジオ・ライブでした。
確か土曜夜の放映だったと思います。
事前に上方をつかんでいた私はその日を心待ちにし、恐らくウキウキしていたはずです。
しかし、当日学校へ行った私に驚愕の知らせが…(あの時代、週休2日などは無く土曜も授業でした)。
「同級生の父上が亡くなりました。お通夜は今夜です」
当時の私は学級委員長でしたので、クラスの代表として参列しなければなりません。
おまけに同級生の自宅は地方(田舎)です。
まさか「今日TVにシカゴが出るんだ」と言う訳にはいきません。
そして「今日会えなかったら、今度いつ会えるかわからないのさ」と言う訳にもいきません。
もちろん、シカゴは諦めて、お通夜に行きました。
どんな気持ちだったか、人道上の問題もありこれ以上は書けません。
外国ミュージシャンを好きになる、ファンになると言う事はこう言うことでした。
見逃せばアウトの厳しい時代。
しかし数年後(4~5年は経っていたような気がします)、この番組は再放送されました。
そしてその再放送は何事もなく、無事観ることが出来ています。
さて「JUMP FOR JOY」を聴いた後、私は例によって「シカゴが演奏した曲」と言うだけの理由で、レコード探しに出掛けました。
市内のレコード店全て(当時は7~8店あった)を回って、デューク・エリントンのアルバムは何枚か見つけました。しかしそのいずれのアルバムにも肝心の「JUMP FOR JOY」は収録されていませんでした。
結局「A列車で行こう」(探している間に代表曲だと知りました)が入っているライブ・アルバムを買い、それをもって「JUMP FOR JOY」探しの旅は一旦「無念のまま終了」したのです。
しかし20歳を過ぎた頃、何を思ったか再び「JUMP FOR JOY」を探しに行ったのです。
今思えば、恐らくジャズ専門のレコード店がオープンしたからだと思います。
私は1枚1枚チェックし、演奏者を問わず「JUMP FOR JOY」のタイトルを探し始めたのです。
そして出会ったのが「マーク・マーフィー:ミッドナイト・ムード」と言うジャズ・ボーカリストのアルバムでした。
1曲目に「「JUMP FOR JOY by Ellington/Webster」と書いてあります。
それ以外の曲は完全なオマケです。
家に戻ってさっそく聴きましたが、マーク・マーフィーの歌う「JUMP FOR JOY」はTVで観た「シカゴ」のそれとは程遠く、さしたる感動もないまま、繰り返し聴く事もありませんでした。
結局、私の好きだったのは「JUMP FOR JOY」と言う曲そのものではなく、シカゴ風にアレンジされ、シカゴが演奏した「JUMP FOR JOY」だった訳です。
その後、ジャズは随分と聴きましたが、シカゴの影響で「ビックバンド」に限られてしまいました。
しかしあれから40年経過し「ビックバンド」に対する妙なこだわりもなくなりました。
今では多種多様なジャズ・アルバムを聴いています。
「マーク・マーフィー」についても何の違和感もなく聴く事が出来ますが、若い頃は無理だったようです。
話は「デューク・エリントンのバースデイ・コンサート」に戻りますが、親に買ってもらった小型のテープレコーダーをTVのイヤフォン・ジャックでつなぎ、シカゴの演奏シーンを録音しました。
それから40年後…モノラル録音なので音の状態は最悪ですが、とりあえず私の手元に残っています。
※YOUTUBEで「シカゴのジャンプ・フォー・ジョイ」が聴けます。
若さ溢れる、ハツラツとした演奏です。
ガムを噛みながらのビートのベース・ライン、ブラス・アレンジと間奏、そしてテリー・カスの見事なギターソロ。
今、観ても聴いても痺れます。
NHKで放映した時のナレーションは、音楽評論家:湯川れいこさんでした。
演奏後のナレーションは「緊張した面持ちでしたが、シカゴらしいイキのイイ演奏でした」と言うものです(ほぼ間違いないと思います)。
今回の話題はこの辺でお開きと致します。
----------
※伊勢太郎の父はかく語りきシリーズは、不定期の投稿となります。