柿の種を拾い集めるように

料理と音楽、たまに科学

「運命’76」と輸入盤/父はかく語りき

~伊勢太郎の父はかく語りきvol.8~

 

 

こんにちは、make me smileです。

 

 

70年代後半以降、ブームはあっという間に去りましたが、クラシックの有名曲をディスコ調にアレンジした曲が続々と発売された時期がありました。覚えているでしょうか?

 

 

その中に、クラシックの名曲、ベートーヴェンの「運命」をディスコ調にアレンジし邦題運命’76としてヒットさせたウォルター・マーフィーと言うミュージシャンがいました。

 

 

 

彼はアレンジャーとしてだけではなく、コンポーザー(作曲)としても才能豊かで、オリジナル曲を沢山作っていますが、日本ではほとんど紹介されることはありませんでした。

 

さて例によって40年以上前の昔話になります。

 

仕事で半年ほど札幌に住んでいたことがありますが、その時の事です。

月一度、レコードショップの輸入盤コーナーに行くことを恒例にしていました。

その日も輸入盤コーナーで色々なアルバムを物色していたのですが、何となくジャケットが気になり、「ジャケ買い」をしたのが「ウォルター・マーフィー」のアルバムです。

 

タイトルは「ファントム・オブ・オペラ」。実写やアニメで有名な外国映画「オペラ座の怪人」の物語をモチーフとしたと思われるアルバムです。

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 私はそれまで彼について、全く知識も興味もありませんでしたし、買った時もすぐに「運命’76」のミュージシャンだとはわかりませんでした。

 

 

どんなジャケットだったかと言いますと、イラストで描かれた

ファントムらしい怪人の顔の微笑んだアップがある。

長く伸びた舌先が二つに割れていて不気味。

両手を顔の前で開き、その隙間から怪しい目つきでこちらを覗いている。

全体に赤茶けた顔色である。子供に見せたら間違いなく「夜泣き」をする。

ジャケ買いにはふさわしくないアルバムでした。

 

 

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※最初に映画化された「オペラ座の怪人」(1916年)のファントム。夢も希望もない顔……

 

 

 

私の輸入盤の買い方ですが、いわゆるジャケ買い(ジャケット拍子の絵や写真、裏面のクレジットが運よくあればそれを参考にする)と決めていました。

 

知らないアーティストのアルバムを、ジャケットのデザインで買うことに、冒険心、否、遊び心がくすぐられるような気もしました。

 

 

 

話は変わりますが、ここで輸入盤について少し……。

確か輸入盤は価格が安かった(国内盤の半値?)ような気がします。

ただ、国内盤の様な解説書は付いていませんので、レコードを買ってもアーティスト情報は得られません。

 

輸入盤はジャケットの右隅だったか左隅に5mmほどの穴が開けられ(輸入の印?)、ビニールでがっちりと完全密封されていました。

 

 

日本ではまず半透明ビニールの袋にレコードが入り、場合によっては更に色々印刷された紙の袋に入っています。そしてジャケット本体に入れられる。

しかし輸入盤の場合には、基本的にレコードむき出しのイメージ。半透明のビニールがまずありません。

レコードを出すと静電気で空気中のごみやチリが凄く寄ってきました。通常、国内盤には通用する「レコード・スプレー」も効果が薄かった気がします。

商品の扱いが全然違います。これは国民性の違いなのでしょうか。

 

輸入盤が「特別悪い」わけではなく、日本盤(国内盤)こそが丁寧過ぎて、世界基準から外れているのではないかと。

 

 

モノを大切に扱う日本人だからこその「半透明ビニール袋」ではないかと、輸入盤を買うようになってから思うようになりました。ただ、輸入盤からは何とも言えない香りがしました。それは不快な香りじゃなく、かと言って「花」のような素敵な香りでもない。

しいて言えば「石鹸」のような香りです。

恐らく気のせいでしょう。しかし、そんなイメージを持っています。

ちなみに日本盤は完全無臭です。

 

あっ、そう言えば香り付きのアルバムがありました。

 

 

それはラズベリーズと言うパワー・ポップ・バンドのサード・アルバムです。

 

 ジャケットはバケツの様なカゴに山と積まれた野イチゴ(ラズベリー)の写真で、ジャケットからは野イチゴのいい香りがします。

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ラズベリーズにはエリック・カルメンと言うアーティストがいましたが、ラズベリーズ解散後、ソロ・シンガーとして活躍します。最大のヒット曲として「オール・バイ・マイ・セルフ」がありますが、これは間奏にクラシック作曲家「ラフマニノフ」の「ピアノコンチェルト第2番」を、やはりヒット曲「恋にノー・タッチ(NEVER GONNA FALL IN LOVE AGEIN)」は「交響曲2番第3楽章」をモチーフにして、ロマンチックな作品に仕上がっています。

 

 

 

話はウォルター・マーフィーに戻ります。

 

 

「ファントム・オブ・オペラ」は先にも書きましたが日本でヒットした「運命’76」とは違い「有名クラシックのアレンジだけではありませんよ、曲もちゃんと作りますよ」とばかりに、ストーリー性のあるトータル・アルバムとして魅力ある作品に仕上がっています。流行りのディスコ・ミュージック一辺倒ではありませんでした。

 

もちろん例にもれず、クラシックのアレンジ曲(ベートーヴェンの「第九喜びの歌」他)も2~3曲ありましたが…。

 

何せ輸入盤です。語学力に乏しい私にはアルバムの詳細を知る由もありません。

 想像するに「オペラ座の怪人」登場人物(ファントム、クリスティーヌ、ラウル)がそれぞれ役名で各々の気持ちを歌っているようです。そしてオペラの場面転換にはインストゥルメンタル(演奏のみ)を使用しているのではないかと思われます。

 

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 私は「ロック・オペラ座の怪人」の「サントラ盤」のつもりで聴いています。

このアルバムがCD化されていないかと探しましたが、残念ながらCDはありませんでした。

 

その代わり「amazonデジタル・ミュージック」のサイトに1曲毎購入可で全曲がありました。数10秒ですが全曲視聴できます。

よくあったと感心しています……。

 

 

YOUTUBEにこのアルバムから2曲アップされていましたが

特に「The Music Will Not End」。

 

伸びやかな歌声と間奏のゆったりとしたギター・ソロが私のお気に入りの

優しさと憂いに満ち溢れた曲です。聴いてみる価値があるかもしれませんよ。

 

 

 

もう札幌まで輸入盤を探しに行くこともないし、現在はレコードを聴く装置もありません。

 

 

この時代です。

外国盤CDは国内盤同様に簡単に手に入りますし、輸入盤をジャケ買いしていた頃の様なドキドキ感も、面白味もありません。

 

音楽のデジタル化は、ますます音楽を聴きやすく、そしてある意味つまらなくなるでしょう。

 

 

それでは今回のお話はこの辺でお開きと言う事で…

 

 

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※伊勢太郎の父はかく語りきシリーズは不定期の投稿となります。